涙の終りに ~my first love~
そして彼女なりに自分に非があった部分、それを長年引きずっていたんだなと思った。

オレの記憶の中ではどんなに自分に非があっても、
素直に自分の口から謝る事など絶対にしなかった真子、そんな彼女の
”私が悪かった・・・”の短い言葉だけで過去の出来事はすべて許せた。

同時に離れていた3年半の間に、真子も色んな事を経験したんだなと思いながら、
車の中で両手を握ったまま見つめ合った。

しばらく見つめ合うとお互いに正気に戻り、照れくさくなって自然に手を離すとオレは会話の為の言葉を探した。

少しの沈黙のあと、オレの探し当てた言葉は”綺麗になったね”だった。
すると彼女は照れるようなしぐさを見せた後、
「ユウジの頭の匂い、懐かしい」と呟いた。

オレはルームミラーを覗き込んでリーゼントにクシを入れると、
「だってこのグリースは変わらないもん」と気取って見せた。

そして改めて真子を見ると、彼女の洋服の着こなしはとてもオレと同じ歳とは思えなかった。
薄いストライプの入ったタイトなスカートに白いピンヒール、自然な栗毛色に染まった髪の隙間から見えるイヤリングがセクシーで都会的な大人の女性って感じだった。

それに引き換え破れたジーンズにダブルの皮ジャンのオレ・・・。

あの頃を意識したオレのファッションは見事に裏目に出て
”こんな事ならオレもスーツで来るべきだった”と後悔していた。

次に会う時はオレもスーツで来ようと心に決めると、国道に車を走らせ海へと向かった。
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