涙の終りに ~my first love~
オレは真子を見つめたまま「願いが叶ったって事はもうオレとは会わないって事?」と
素直に思いをブツけてみた。
すると真子は大きく目を見開いて「そう言う意味じゃないの!」と
さらに顔を近づけてきた。

真子の顔が急に接近した分、反射的に後ろに下がってしまいキスするタイミングを逃したオレは慌てて天井を見つめながら「それならよかった」と唇を尖らせて言うと、
オレと同じように天井を見つめた真子は少し笑いながら「やっぱりユウジだね!」と意味深な言葉を吐いていた。

多分真子はオレの下心を見抜いていたんだと思う。

二人して天井を見上げたままの状態でオレは左手を伸ばし、改めて彼女の手を握った。
すると車乗ってすぐに手を握った時は気付かなかったが、この時は真子の手が荒れているのに気付き、

「手が荒れてるね?」と思ったままを無神経に言うと、
「もう!」と怒った彼女はオレの握っている手を振りほどいてしまい、
結局彼女の手の甲を握るようなカッコになってしまった。

そんな真子の手を包みながら二度と離したくない、もう遠くには行かせない、心の中でそう思った。

シートを倒したまま手を取り、オレ達は時の流れを忘れ夜明けまで語り合った。

やがて東の空が薄い紫色に染まり始め、星空を写していた海は黒から青に色を変えようとしていた。

「夜明けだね、そろそろ帰ろうか」とオレはシートを起しエンジンを掛けると、
少し遅れてシートを起した真子は「また会える?」とオレの顔を覗きこむように言うので、
「そんな当たり前の事聞くなよ」と笑いながら返して車を走らせた。

帰りは待ち合わせ場所に指定したコンビニではなく、彼女の家の前まで送った。

「それじゃまた電話する」、「またね!」と簡単なやり取りで別れたけど、
そんな普通な別れが出来るようになった事に満足していた。


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