涙の終りに ~my first love~
恋のゴールデンリング
そして決め手はその親切な店員さんの一言だった。
デザインと値段も同じぐらいのリング二つでどちらにしようか迷っていると、

「一番大切なのは贈る人の心です、心がこもっていれば必ず喜んで貰えますよ」の一言で決めた。

痛い出費だったけどこの指輪を付けた真子を想像するだけで大満足だった。
小さく包まれ装飾された指輪を受け取り店を出ると直ぐには駐車場に向かわず、
次はおもちゃ売り場に行った。

真子に贈り物をするならあの男の子にも何かプレゼントをと、
オレはすでにそこまでその子に情が入っていた。

指輪に比べて対した額じゃないけど、
子供の好きそうなキャラクター物のおもちゃを買った。
荷物を抱え駐車場までやって来ると、
取り合えずオレはプレゼントをトランクの中に入れて隠す事にした。
贈る前に
”これ何?”
なんて見つけられてしまってはカッコがつかないからなと思いトランクを閉じると、一人で幸せな気持ちになっていた。

用意は出来た。

後は「いつ渡そうか・・・」とニヤケながら車を走らせ家へと向かった。
その後、ブツを隠したままの状態で何度か真子に会った。
オレはトランクの中の贈り物なんて何も知らない彼女の瞳を見ていると、
何故か可笑しくて噴出してしまいそうになり、笑わないようにするのに必死だった。

そして5月の5日子供の日、その日に改めて真子にプロポーズしようと決めた。

それまでは胸いっぱいの愛とプレゼントはトランクに閉まって措こう決めた。


四月の終り、その日は雨だった・・・。
あと一ヶ月ほどで衣替えの季節だというのに冷たい雨だった。

仕事を終え帰路につく途中、昨夜からの雨でトランクの中の贈り物が心配になったオレは
パチンコ屋の駐車場に立ち寄りトランクを開けた。

そこには無事に小さな包みがふたつ揃えてあったが、
オレの気持ちが詰まったこの包みが冷たい雨の中、
トランクの中のままでは可哀想になり後部席へと移し変えてあげた。

この時は次に真子に会うまでには必ず又トランクに移そうと思っていた。

だけどオレの真心の包みふたつは、再びトランクに戻る事はなかった。


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