[短]6月の第2ボタン

「幸希。」



彼女の声で、記憶にトリップしていた自分に気づく。

が、同時に目に映ったのは、彼女が頬を滴で濡らしている姿だった。


動揺した僕は何と声をかけたらいいのかわからず、ただオロオロするばかり。


さっきは麻人が教室を去ったことに安心したけれど、

今ほど彼の行動を憎んだことはない。


焦っている僕に気を使ってのことなのか、彼女は「ごめん。気にしないで」とこぼした。


気にするなと言われても、気になってしまうのが性分。



「…どうすれば、いいのかな…」



独り言のように呟いてみるけれど、解決策は浮かばない。


泣いた彼女を前にして、どうしろと言うのだ。

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