過去の贖罪
振り返って::
過去の贖罪



 この日始めて見る人もいた。十人ぐらいの人間が一斉に大きな車に乗る。
車に揺られながらふと考える。
 あの時から僕達の運命は決まっていたなんて不思議に思う。でも偶然じゃない、なるべくしてなった僕達の結末。きっとあの時、あの火事がなければ二人は一生出会わなかった。だからその日を運命と名付けるか、記念日と名付けるか、隣の人と肩をぶつけながらずっと考えていた。
 あの日を迎えたことで、僕は今までの辛いことが全てあの日の伏線になったと思えば、全てを肯定することが出来た。だからこの先何が起きても晶子との思い出を糧に生きていけるだろう。それを至福と言うには歳が若すぎるだろうか。でもこれからまた長い旅路が待っている。それぐらいに思わなければこの世の人生は長すぎる。




 「お前、日曜休みな」
 えっ?と答えた。「ちょうどシフトの関係で休みが重なるんだよ」
 チーフマネージャーの中村が偉そうな口調で吐いた。
 「できれば分けてほしいんすけど」
 僕の会社は、休みが月に六日までと決まっている。ほかの人の休みの都合で、独身の僕は空いている日に回された。
 「だめだ、そこしか空いてないんだ」
 とすると、次の休みまでの間隔が一週間以上になる。なんていいかげんなんだ。こんなことが許されていいのか。労働局に言ってやろうか、今まで何度もそう思ったが、その度にあきらめた。
 言ったって言い返される。相手は権力だ。社員の中で一番下っ端で、役立たずの僕は無力なんだ。怒るだけパワーの無駄遣いだ。そう思いながらずっと毎日が流れていった。
 「いらっしゃいませー」
 僕の仕事が何かわかるだろうか。営業関係ということは察知できるだろう。じゃあ次のヒント。
 「ハイオクですか、レギュラーですか」
 そうガソリンスタンドマン。
 客のウインドーを拭きながら考えた。なぜこの仕事を選んだのだろう、最近毎日考える。
 思い起こせば、高校の三者面談だった。







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