過去の贖罪
 当時、僕は小学校から卓球部に所属しており、唯一、人と対決して勝てる種目だった。三年のときに誰も立候補がなく、仕方なく部長になった。
 部長という役柄のおかげで、学校が終わると卓球、休みになると卓球、試験が終わると卓球で、何にも将来のことを考えていなかった。
 いや、ずっとこのままでいたいという気持ちのほうが強かった。一時期プロも夢見ていた。しかし周りには言えなかった。現実的でないし、夢を追いかけるとかかっこいい台詞は現実からの逃避に思えた。
 なんとなく面白そうだという理由で、ガソリンスタンドに決めてしまった。サービス業に就けば自分のジメジメした内気な性格が変わると思っていた。しかし今に至るまでは、その兆しは見られない。
 なぜもっと慎重に決めなかったんだろう、いままでの軽薄な人生のつけかな。こちらを振り向かず、片手でお釣りを鷲摑みにし、帰る客を見ながらそう思った。
 からすに狙われた胡桃ように、僕の人生は終息へと向かっている。

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