赤りんご
亮太と夏休みはたくさん遊んだ。
たまに電話やメール。
ご飯も作りに行ったし、
買い物にも付き合ってくれたし、
ホントは恋愛ものなんて柄じゃないのに、一緒に映画も見てくれたし、
浴衣を着て、キレイな花火も一緒に見た。
「カワイイ」って言って、頭を撫でてくれた。
たくさんわがまま言ったけど、
たくさんデートして、
たくさん笑ったね。
いつも手は握ってくれていたけど、
でも……
抱きしめてもくれない。
キスもしてくれない。
いくら『好きだ』と言われても、
どうしても不安になっちゃうんだ。
『言葉で伝えなくても分かる』とか、
『触れ合わなくても分かる』とか、
今の私には、そんな余裕なんてなかった。
夏休みも終わろうとしていて、最後にまたデートに行くことになった。
前に亮太が言ってくれた
―「しょうがねえな…じゃあ俺が何か考えとくよ。」
これが現実になるんだ。