赤りんご
一軒家はいくつかあるみたいだけど、
人の気配は全くしない。
本当に遠い場所まで来たんだな…
そう思わせるような景色。
照り付ける太陽とは反対に、歩くうちに風の気持ち良さが肌に感じられた。
「風…気持ち良いね」
思わずそう言うと、亮太はニコッと笑顔で返した。
太陽の反射で少し茶色くなる亮太の髪の毛。
そこもまた、好きになった。
「もうちょいだからな」
「うん」
そんなに歩いた気がしなかった。
周りの景色が珍しくて、キョロキョロ辺りを見回していると亮太は言った。
「前見てみ」
色んなものに気が奪われていて、目の前の景色に全く気づかなかった。
「すごい…海…!」
瞬きをするのももったいないくらい。
「すごいね!!」
「そうだな」
亮太が連れてきてくれた場所は、とても静かな海だった。
由美たちと行った、人がたくさんいるような海岸じゃなくて、本当に誰もいない…
私と亮太、二人だけ。