赤りんご
波の音と交互に聞こえる亮太の息遣い。
長いキスの後に、亮太は名残惜しそうに唇を離した。
「………ゴメン」
何故か亮太の声は震えていた。
何で謝るの…?
私はこうやって触れ合うことが出来て、すごく幸せだよ。
私は何も言わずに、もう一度亮太に抱き着いた。
辺りはもう薄暗くなっていた。
次第に風も冷たくなる。
亮太は私の体を離して頭を撫でた。
「もう帰ろっか…」
「もうちょっと…一緒にいたい」
私が言ったわがままに、亮太はまた優しく笑った。
「嬉しいけど…風も冷たくなってきたし、風邪ひいたら困るだろ!」
またいつもの笑顔で私のおでこを拳でコツンと叩いた。
心配してくれる亮太の言うことなら、素直に帰ろう。
確かに…ちょっと寒いし。
思い出の海に別れを告げて、私たちは駅へ向かった。
『ゴメン』
亮太が言ったあの言葉、きっと長い間触れ合わなかったことに対して言ったんだ。
私の気持ちに気付いて、謝ってくれたんだね…。
私はそう思い込んでいた。