赤りんご
「なあ由美〜!アイツまだ来てない?」
「まだなんじゃない?」
大崎くんが言うアイツとは、多分私の隣の席の人のことだろう。
男か女、どっちか分かんないけど…遅刻魔なんだ。
「由美、ここの席って誰?」
「ここは男が座ってる、でもその人超冷めてるから関わらない方がいいよ!」
「冷めてる…?」
「健太とは仲良いんだけど、うちらでも絡みづらいよね〜。」
彩花とえみちゃんは二人揃って何度も頷いた。
冷たい人って、どんな人?
怖いのかな…?
ガラガラガラ…
教室の扉が開いた。
「健太!水嶋くん来たよ」
「………えっ?水嶋…?」
扉の方を振り返った。
まさか……
そこには、スラッと背の高い水嶋くんが立っていた。
さっき図書館で会った人だ。
私には気付かず、水嶋くんは澄ました顔で席に着いた。