赤りんご
彩花が担任に呼び出されて職員室から教室に戻る途中、トイレの前を通った。
喧嘩っぽい怒鳴り声が私の声に似ていたんだけど、気のせいだと思って通りすぎたらしい。
別人だと思って、教室に戻ると私はいなくて…
事情を何となく察した亮太と彩花が助けに来てくれたんだって。
彩花には感謝しなくちゃ…
彩花が気付かなかったら…私、何されてたか分からない。
そう思うとぞっとした。
「もうこんな思いさせねえから…」
「ありがとう…あの人たち、どうなってるのかな…」
「健太と鈴木がいたら大丈夫だろ、鈴木は迫力があるからな!」
亮太の言葉に思わず笑ってしまった。
「ゴメンね、私弱くて…」
しゅんとした私の顔を見て、亮太はもう一度ぎゅっと抱きしめてくれた。
「お前は強くならなくていい…俺が守るから」
「…嬉しい…でも私、あの人に言い返したんだよ!」
笑顔で見上げると、亮太はニコッと笑って頭を撫でてくれた。
「そうか!偉いな…でも俺が守るから無理はするな、な?」
「うん!」
やっと二人して笑顔になれた。
最悪な日だったけど、私にとっては大きな一日になった。