赤りんご





「…………………っ!!」



相手の顔が見えたとき、今にも叫んでしまいそうな声を、必死で飲み込んだ。



どうしたらいいのか分からず、とにかくヤバイと思って、気付けば二人で走っていた。




適当に走ると偶然にも駅の入口に着いた。



ハアハアと息を切らせて、私と亮太は顔を見合わせた。




「ビックリしたあ…亮太…見た?」



「見た!見た!」



「見間違いじゃないよね…!?」



「多分…見たまんまだろうな…」




大丈夫なのかな…



見ちゃいけないものを、見てしまった気がする…。




だって…だって…



こんなことってある…!?



「亮太…どうしよう…」



「俺も分かんねえよ…!」



「あ〜もう、気持ちが着いていけないよ〜!!」



「本多の彼氏って…マジかよ…」



窓越しに見えた人。



えみちゃんと向かい合って、楽しそうに話す人。



この目で見てしまった…




えみちゃんの噂の彼氏…。



あのお店にいたのは…








紺野先生だった。




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