赤りんご
修学旅行前日。
昨日のことが頭から離れなくて、地理の授業に集中出来るはずがなかった。
だって…紺野先生の授業だもん。
先生のささいな動作でさえ、亮太も私も反応してしまう。
「お前、見すぎだって!」
ボソッと呟く亮太は私の頭を軽く突いた。
「しょうがないじゃん…!」
亮太は切り替えが早いんだよ…。
今、えみちゃんのこと見たのかな?とか思い込んじゃうし…。
由美たちがいないタイミングをついて、何度も聞こうと思った。
事実なんだろうけど、ちゃんとえみちゃんの口から聞きたかった。
でも…聞けない。
聞きたいけど、聞けない。
私も冷静に考えてみた。
今まで自分の恋バナをしなかったのも、この恋を守るためなのかもしれない。
えみちゃんなりに、必死に今まで守ってきたんだ…。
秘密にしなきゃいけない恋だから…
そう思うと、聞いちゃいけないと思ったんだ。
いつかえみちゃんが話してくれるのを信じて、私は待つ。
だから私は、こっそりえみちゃんの恋を応援しよう。
そう決めた。