赤りんご





紺野先生は私たちを叱るどころか、何も言えなくなってしまっていた。



しばらく沈黙が続き、二人は黙り込んだまま、俯いてしまった。




もう見てられないよ…




「先生…えみちゃん、ゴメン…私知ってたんだ」



「俺も…」



「え?」



二人は目を丸くして私たちを見つめた。




「先週の日曜日、二人が食事してるところをたまたま見たんだ」



「えみちゃん…黙っててゴメン!でも私、誰にも言ったりしないよ!」




紺野先生とえみちゃんは、何か相槌をしているように見えた。




「悪い、お前たちに見られてたなんてな…正直に言う。俺は、本多と付き合ってる」



「りい…話せなくてゴメンね」



強い眼差しで私たちを見つめる二人。



本気なんだって、分かった。



こんな形になってしまったけど、ごまかさずに、えみちゃん自身から本当のことが聞けて嬉しかった。




< 188 / 215 >

この作品をシェア

pagetop