赤りんご
「気にすんなよ!俺だって誰にも言うつもりなんて全くないから」
「水嶋、廣瀬…ありがとう。お前たちに、こんな風に世話になるなんて思わなかったけどな…」
紺野先生は頭をかいて苦笑した。
「でも何でお前達がここにいるんだ?」
「先生たちと同じ理由だよ!」
同じ理由…?
「そうか…俺も叱れる立場じゃないからな。ここは見過ごすよ」
「助かったよ先生、ありがとな!」
「ただし…お前たちクラスの部屋の周辺の見回りは、2時まで俺の担当だ。それ以降は違う先生が来る。気をつけろよ」
「分かった」
亮太と先生のやり取りを、しばらく黙って見ていた。
先生は、見回りの時間を利用してえみちゃんと会ってたんだ。
2時以降は違う先生が見回りに来るから、それまでに部屋に戻れってことだよね。
「りい…後でちゃんと話すから!」
「うん…」
「お前ら、あんまりいちゃつくなよ〜!」
紺野先生は優しく微笑んでから、えみちゃんの手を取って階段を下りて行った。