赤りんご





図書館に行ってなかったら、きっと私は水嶋くんと友達にはなれなかった。



いくら隣の席でも、水嶋くんは私に声をかけてくれなかったかもしれない。





「水嶋くん仮面かぶってるね!」



「悪いか?」



少し目を細くして水嶋くんは私を見下ろす。





「いいと思う!!」




それを聞いて水嶋くんはニッコリ笑った。




私だけが知っている水嶋くん…そのままのあなたでいてほしい。




心の中でそう思っていた。







「ほらー!着いたぞ!」



あっという間の2駅……





「水嶋くんはどこで降りるの?」



「あーあと3駅くらい?」




結構遠いんだ…





電車から降りた。




「じゃあな!ちびりんご!」



プシューッ…………



電車のドアが閉まる。




「変なあだ名付けないでー!!」



憎めない無邪気な笑顔で水嶋くんは小さく手を振った。



電車が走り出してホームに一人取り残される。




『ちびりんご』なんて今まで言われたことがない。



やっぱり悔しい…!










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