赤りんご
前にもこんな風に思ったことがあった。
大事にされてるんだって…そんなことは分かってる。
亮太が私のことを1番に想ってくれていることも、ちゃんといつも伝わってる。
でも、自分から切り出すのはやっぱり無理。
言えるはずがない。
だからお願い…
亮太、まだ何も言わないで。
「もう9時か…そろそろ帰らないとな」
「え…?」
「駅まで送るよ」
私の願いも虚しく、亮太はニコッと笑いかけた。
いつもと変わらないその笑顔が、余計に胸を締め付ける。
亮太はやっぱり…まだそんな気なんてないのかな。
大事に思ってくれていても、寂しいよ…。