赤りんご
「つーかお前ちびなのに玉入れとか無理だって!!」
「ハハハハハ」と笑い声が響く。
「ひどいー!」
ほっぺを膨らます私に、水嶋くんは指でツンと突いて空気を抜いた。
「冗談だよ、もう体育祭サボろうぜ!飴ちゃんやるからさ」
「飴ちゃんで私のこと釣らないでよ〜」
そう言いながらりんご味の飴を口の中に入れた。
「おいしい!…何でいつもりんご味ばかり持ってるの?」
「りんごが好きだから」
「まんまじゃん!」
「もう一つは、お前の機嫌が良くなるから」
「何それ!やっぱ私のこと釣ってる〜!」
水嶋くんは優しく笑った。
今、優しい時間がすごく幸せ。
さっきのは何だったんだろうって、今さら恥ずかしくなった。
「釣ってないよ。今飴ちゃんをあげたのはただの口実。」
「口実…?」
「うん。お前と、もうちょっと一緒にここにいたかったんだ。」