赤りんご






「つーかお前ちびなのに玉入れとか無理だって!!」


「ハハハハハ」と笑い声が響く。




「ひどいー!」



ほっぺを膨らます私に、水嶋くんは指でツンと突いて空気を抜いた。





「冗談だよ、もう体育祭サボろうぜ!飴ちゃんやるからさ」



「飴ちゃんで私のこと釣らないでよ〜」




そう言いながらりんご味の飴を口の中に入れた。






「おいしい!…何でいつもりんご味ばかり持ってるの?」



「りんごが好きだから」



「まんまじゃん!」




「もう一つは、お前の機嫌が良くなるから」



「何それ!やっぱ私のこと釣ってる〜!」




水嶋くんは優しく笑った。



今、優しい時間がすごく幸せ。



さっきのは何だったんだろうって、今さら恥ずかしくなった。




「釣ってないよ。今飴ちゃんをあげたのはただの口実。」



「口実…?」




「うん。お前と、もうちょっと一緒にここにいたかったんだ。」









< 46 / 215 >

この作品をシェア

pagetop