赤りんご
「亮太…?」
誰か知らない女の子が亮太の名前を呼んだ。
私も亮太もその声の主の方へ振り返った。
「栞…」
亮太は繋いだ手を急に離した。
しかもかなり驚いている表情…
「久しぶり…元気だった?」
その女の子は亮太にニコッと笑いかけて言った。
私立っぽいセーラー服を着た、大人しそうで清楚な女の子だ。
「うん…栞は?」
「元気だよ……あ、邪魔しちゃってゴメンなさい…じゃあね。」
一度私の方を見て、軽く頭を下げていった彼女は駅の中に入っていった。
私はその小さな背中を見つめた。
「元カノ…?」
出た言葉は「友達?」ではなかった。
聞かなくてもわかる。
私と話す時と同じ…
優しい声をしていたから。