静かなキスを、君に。




「――――ずっ、」


「………」






「ゆずっ!」

「………わぁっ」



規定の席にいつもいるあの人にぼけっとした視線を向けたまま考えていると、いつのまにか驚くほど近くにあった友人の顔。



「また、考え事?」

「えへへ」

「またあの人?」と友人は窓際のいつもの指定地に座った彼に視線を向ける。







「……うん」



「ったくもー、そんな気になるんならさっさと告っちゃえばいいじゃない!」

「無理だよ!無理無理…」

「弱虫。近くの席には座れるくせに」




そう。

私は図書館に来ればいつも彼の前のちょっとずれた席に座る。
それも彼の姿を見たいが為。
最近じゃ、学校があっても終わったらすぐ向かう。
休日だって、それは変わらない。







名前も知らないけれど、

















学校も同じじゃないから調べようもなくて、どうしようもない。

だから私は毎日図書館に通う。


一目でもあなたに会いたいから。




いつもドキドキする心臓を抑えて、


ちょっとずれた席に座るんだ。








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