カメとうさぎの恋物語
話しをしている内にカウントダウンが始まった。3秒2秒1秒と待ちに待った時間に近づいた。しかし、聞こえて来たのはチャイムではなく耳が痛くなる声だった。
「カメ!これを1時までにやっといてくれ。」
無情にも僕は神に捨てられた。
「はい。わかりました。」
お昼は1時間。この作業が終わったらお昼は終わる。兎原田さんに会えないまま一日が過ぎてしまう。僕は悔しいのか持ってきていたパンを勢いよく食べた。
「おい、全部食べるなよ。食堂行く用があるんだから。」
「勇樹君。どうして?」
「兎原田さんに会いたいならこの紙の山を15分以内に終わらせるぞ。」
勇樹君は僕のために戻って来てくれた。友の行動に僕は涙が出て来た。
「ありがとう。本当にありがとう。」
勇樹君のおかげさまで仕事はあっという間に終わった。
「残り30分もある。まだ兎原田さんは食堂だな。急ぐぞ。」
「うん。」
僕たちは走った。そして、食堂に着くなり兎原田さんの姿を探した。話したりする訳ではない。いるかいないかそれだけでいい。
「さとし、あそこ。」
勇樹君の指した指先には僕が憧れる兎原田さんがいた。仲良く友達と話していた。
「よかった。一目見れて。」
「近くの席が空いてるからあそこ座るか。」
「いいよ。僕はここで。」
「いいから来いよ。」
無理矢理引っ張る勇樹君に僕はまかせた。別に近くに座るぐらいなら神様も許してくれる。そう思った。彼女は話しに夢中になっていた。僕と勇樹君は静かに安いA定食を食べていた。さりげなく勇樹君の方を見たとき何かの指示を僕にしていた。それは驚くものだった。
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