夢の中で
目の前が真っ暗になった・・・

さっきまで真っ白い部屋にいたのに・・・

本当にどうなってるんだ?・・・

遠くから声が聞こえる。

「・・・う・・・・・でば・・・・」


声がだんだん大きくなっていく。

「洸!!」

目を開けるとそこには雫がいた。

彼女目を赤くして泣いていた。

「し・・・ず・・・く・・・?」

体中に激痛が走った。

目をやると包帯やらギブスが体を包んでいる。

「洸ってばこっちに来る途中に事故にあって私が実習に来ていた病院に担ぎ込まれたの。」

雫は涙ぐんだ目をこすりながら言った。

「さっきまで洸のお母さんが来てたんだけど、お仕事忙しいからって帰っちゃったみたい。」

子どもが事故って入院してるって言うのに仕事優先かよ・・・

「ここってお前の実習に来てる病院だって言ったよな・・・」

僕は体をゆっくりと起こした。

ゆっくりとだったのに体中がものすごく痛い・・・

「そうだよ。一通り仕事が終わって帰ろうとしてたら洸が救急車で担ぎこまれてきたの・・・本当にびっくりしたんだから。」

雫の目にまた涙が浮かんだ。

「起きましたか。」

部屋の入り口から白衣を着た男の人と女の人が入ってきた。

「先生、婦長。」

雫が立ち上がってお辞儀をした。

「夏野さんよかったですね。彼が目を覚まして。」

先生はにっこりと笑って雫を見た。

「牧野さん、彼女はあなたがここに担ぎこまれてからずっとあなたのそばにいて看病していたんですよ。」

「先生!!」

雫は顔を赤くして立ち上がった。

「夏野さん、病院では静かに。」

先生の隣に立っていた女性がビシッと言った。

「すいません・・・」

雫は頭を下げて椅子に座った。

「さて、牧野さん。」

先生が僕のほうを向いて言った。

「怪我のほうは全治半年と言ったところですね。バイクでの事故だったので結構大きな怪我ですがリハビリしだいでは元通り動けるようになるでしょう。」

先生は最後にしばらくは絶対安静なので気をつけてくださいと言って婦長さんと部屋から出ていった。
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