夢の中で
「それじゃ雫、洸くんを頼んだぞ。」

そういっておじさんたちは部屋を出て行った。

「ごめんね洸、うるさかったでしょ?」

「ううん、そんなことないよ。」

本当に楽しかった。

家を出て1人暮らしをしながら大学に通っていたがこんなに楽しかったことはあまりなかった。

「でも、両手が使えないって結構不便だな・・・」

「これじゃ食事が・・・」

「大丈夫、あたしが食べさせてあげるから。」

雫が早速とばかりにりんごの皮をむいてあーんと言ってきた。

「恥ずかしいって・・・」

「文句言わないの。そうじゃなきゃ食事もできないでしょ?はい、あーん。」

結構恥ずかしい・・・

ここでふと考えてしまった。

両手が使えないとトイレが・・・

まさかそこまで雫にさせるわけには・・・

「ねぇ洸、そろそろトイレにいく?」

「えっ・・・」

いや、さすがに、そこまでは、いやいや・・・

自分でも何を考えているのかわからなくなってきた。

「あの、その・・・」

「トイレは今岡くんに頼んであるから。」

雫はいつの間にか男の人を部屋に連れてきていた。

「どうも、今岡といいます。この病院で看護師をしています。」

ガクーときた。まぁそうだよな・・・

左足が折れていてさらに手が使えないので1人で立つこともできない。

そのため僕は彼に抱えられて車椅子に乗せられた。

「牧野さんって意外と体重軽いんですね、身長結構あるのに。」

「そんなことないですよ。たしかこの前測ったときは52kgだったかな?」

「十分軽いですよ。」

彼は非常に明るい性格であることがわかった。

僕よりも年上なのに敬語を使ってくるので変な感じだ。

トイレにつくと車椅子専用のトイレに入った。

「へぇ、こんなふうになってたのか。初めて入ったよ。」

「普通の方は使いませんからね。」

トイレは洋式タイプだったためズボンを下ろすだけでできるようだ。

さすがにズボンを下ろすことだけはなんとかできた。

また今岡くんに車椅子に乗せてもらって部屋に戻った。
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