夢の中で
「朝まであとどれくらいかなぁ~?」

僕は背伸びをしながら言った。

「具体的には朝になれば自然に帰れるんじゃない・・・」

「ここは夢の世界・・・朝になって誰かが自分を起こしてくれればここから出られる・・・」

「起こされなければ・・・」

桜ちゃんは言うのをやめた。

「起こされないとどうなるの?」

僕は聞き返す。

「この世界から出れなくなる・・・現実の自分が起きなければ夢は続く・・・永遠に・・・」

僕にはまだあまりよく理解することはできなかったけど、このときの彼女の言っていることは本当のことなんだと思えた。

そして僕は考えた。

僕はちゃんと朝になったら起こしてもらえるのだろうか?・・・

現実の僕は病院に入院しているから誰かが起こしてくれるはず・・・

でももし誰も起こしてくれなかったら?・・・

実の親でさえ入院したときには顔を合わせないで帰っているくらいだ・・・

友達も少ないほうだし、お見舞いに来てくれるやつなんているのか?・・・

僕の不安は少しずつ大きくなっていった。

心の中の暗闇が広がるように不安が襲う・・・

突然僕は我に返った。

「そうだ、不安なのは俺だけじゃない・・・桜ちゃんのほうが俺より何倍も怖いはずだ・・・なのに俺は自分だけ怖がっちゃってて・・・」

僕はそれ以上ことをマイナスに考えるのをやめた。

大丈夫・・・きっと大丈夫。

朝になればきっと誰かが起こしてくれる。

そう考えていた。

このときはただそれだけでよかった。

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