独眼狼ーワンアイウルフー



次第に2人の声すら遠ざかる。


「だめだ…っエディリア!!」


街の人々が姿を消し、残ったのはレクスと1年前の自分達だけ。


「エディー…、エディリア!!」


ただ叫ぶ事しか出来ないレクスの隻眼に、何かが映る。

…それは、4体のイーグル。


「……やめろ、やめてくれっ!!」


突然、レクスの足が動くようになった。

エディリアの元に行こうとした途端、地面が泥沼と化した。

走れば走るほど、体が泥沼に沈んでいく。


「エディ、リア…っ」


1年前の自分を置いて、エディリアがイーグルの元に走り出した。


「行くなっ!エディリア!!!」


叫んだ声が、1年前の自分の叫びと重なった。

…気付けば、レクスの体は1年前の姿に変わっていた。

エディリアの元に行こうと、レクスは泥沼をかきわけ歩く。

腹部まで泥沼に沈んだ。


それすら気にとめず、歩みを止めないレクスに……


『お兄ちゃん』


エディリアが声をかけた。


「エディー…っ」


顔を上げたレクスは息を飲んだ。


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