独眼狼ーワンアイウルフー
しばらくして、少年の気持ちが落ち着いたであろう頃を見計らいケビィンが声をかけた。
「聞くの忘れてたが……お前、名前は?」
コハクも、ようやく名前を聞いていなかった事に気づいた。
「レクス…。レクセウス・クルーリオ……」
「そうか。ならレクス、これから宜しくな」
ケビィンは笑顔で言うと、レクスにスッと手を差し出した。
手を差し出されていたが、レクスはケビィンの手を握ろうとはしない。
「んだよ、つれねぇなぁ!!」
するとケビィンは差し出した手を更にのばしレクスの手を掴み、無理矢理握手を交した。
「………。」
レクスは眉に皺をよせ嫌がっていたが、ケビィンはお構い無しである。
その様子がおかしくて、コハクは笑みを溢した。
―……この日から約3週間後。
病院から退院したレクスは右目の視力が完全に無くなったため、それを補う訓練を受ける事となった。
その訓練は、けして簡単な事ではなかった。
だが、レクスは弱音を吐く事なく訓練を続けた。
そして、レクスが第一軍師団に入団するのは退院してから更に5ヶ月たった後の事である……。