独眼狼ーワンアイウルフー
ルイが辺りを見回してからイルムに話しかけた。
「イルムさん、団長は?姿が見えないけれど…」
「団長ならさっき出ていきましたけど、もうそろそろ……」
「稲葉霧兎(いなばきりと)…入るよ〜」
イルムが言いかけた時、オペレーター室の扉が開き1人の男が入って来た。
鳶(とび)色の寝癖混じりのボサボサの髪。
銀ぶちの眼鏡の奥に見える、黒い瞳。
軍服の上から白衣を着ているが、細身である事が分かる。
「団長!!」
コハクがそう呼ぶと、霧兎が歩み寄って来た。
レクス達は霧兎に向かい、敬礼をする。
「やぁ。コハク、レクス、ルイ。…意外と来るの速かったねぇ」
「迅速な行動が大切ですから」
ルイがそう応えると、霧兎は笑った。
「あんまり真面目にしすぎると、疲れるよ〜?」
「大丈夫です。これが普段通りなので」
「相変わらずだねぇ、ルイは」
大袈裟に肩をすくめ霧兎は、自分の椅子に座るとレクス達の方へ向き直った。
足をくみ、眼鏡を押し上げると霧兎は机の上に置いてある資料に目を通した。