独眼狼ーワンアイウルフー


『兄ちゃんの仇だあぁっ!!』


タイガーの爪が再び、向かって来るケルベロスの頭部を狙う。

その動きは、数々の戦いを体験してきたレクスには読み取られていた。


「…遅い」


ケルベロスが身を低くし、攻撃をかわす。

それと同時に、ケルベロスがタイガーの右前足に噛みつく。

ケルベロスの牙が貫通し、タイガーの右前足を噛み千切る。


『うわっ!!?』


右前足を失った事により、タイガーがバランスを崩す。

その機会を逃す筈もなく、ケルベロスはタイガーの左前足を爪で引き裂く。

タイガーが倒れ、小さな地響きが起こった。


『くそ…っ動けよ!!』


両前足を失ったタイガーは立ち上がるどころか、動く事すら出来なかった。


「…終わりだな」


レクスはそう呟くと、タイガーに背を向け歩き出した。

このまま撃破される、と死を覚悟していたタイガーの操縦士が叫んだ。


『……なんでだ…。なんで俺を殺さないっ!!』


レクスはケルベロスの歩みを止めないまま応えた。


「言ったはずだ。……お前を倒しても倒さなくても同じだ、と」


タイガーとの距離が離れるにつれ、操縦士の叫び声が遠くなっていった。

そして、そう時間がかからない内に声は聞こえなくなった。


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