独眼狼ーワンアイウルフー


「ち…っ」


爪と爪とがぶつかり合い、辺りに甲高い音が響く。

フェンリルの爪を己の爪で受け流しながら、レクスが口を開く。


「……なぜ名乗ったりした。情報を流せば、自分が不利になるのに…」
『俺なりの流儀でな。強い者には己の名を名乗る…。…それが死に行く者への、せめてもの贐(はなむけ)だっ!!』


ゼノスは叫ぶと、再びケルベロスに爪を振り下ろした。

ケルベロスはそれを身を捻らせてかわし、反撃に出る。

フェンリルはその攻撃をかわしながら、また爪を振り下ろす。


今度はケルベロスの脇をギリギリかすめる。


『…流石だな』


ゼノスが呟くが、その声にはどこか余裕が伺える。

レクスが更に攻撃を仕かけようとした瞬間、遠くで地響きと爆発音が響いた。

思わず反応してしまったレクスに、フェンリルが襲いかかる。


「くっ!!」
『どうした!!援護など期待するだけ無駄だぞ』
「……っ」


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