ええねん

「ごめん」


 それはなかば無意識に漏れた言葉。
 
 自分でも言ってから驚いた。

 驚いて思わずリョウと顔を突き合わせてしまう。


「え?」


「あ、いや、オレの方が経験地高いのに、先に気づいて手をうてなかったんは、オレのせいやから」


「そんなこと」


「オレがもっとチームまとめとったらよかったんや」


「響くん」


「自分一人で楽しくボール持つんやなくて、ボール出して。

 みんなで守ってみんなで責めたらよかったんや。
 
 自信過剰やった」


「そんなことない、響くんはやっぱりすごくて」


「ええねん、ほんまのことやから。

 オレがあかんかったんや」


「違う」


「違うことあるか。

 今気づけへんかったら、あかんやろ?

 冬に間に合わんようになる。

 今からやったらまだ取り返せる」


 リョウは黙っていた。

 オレを見上げて。

 そして小さく言った。


「冬?」


 と。


「選手権、やろ?」

 そうや。


 高校サッカーの頂点はインターハイやない。

 

 冬の選手権大会や。



 国立競技場や。


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