ええねん

 カツリョウが扉を開けた。

 それは資料室。

 かび臭いようなしんきくさい部屋。

 それがいったい何を意味するか。

 人に聞かれたらまずい話。

 それくらいの勘は働く。



 でも。

 それはいったい何なのか。

 カツリョウはパイプ椅子を二脚、壁にそって立てかけてあったやつを広げる。

「座れ」


 口調がきつい。

 やっぱり怒ってんのか。

 けど。


「座るけど、何なん?」


「そ知らぬ顔で通すつもりか?」


「そ知らぬ顔?」


「今朝電話があった」


「電話?」


「リョウの母親からだ」


 そこで返答をためらったのはオレのミス。


「お前は知らないと思うけど、あいつ」


 昨日まで皆勤だったんだけど?



 いまどき皆勤賞とかあるんかいな。

 とかいうツッコミがゆるされる雰囲気ではない。

 それくらいの空気も読める。


「具合が悪いそうだ。
 
 熱もあるらしい。

 めずらしいことだからって親御さんも無理させず休ませるらしいけど」


「まぁ部活も休みやし、ええんちゃう」


「ええんちゃう?」


 あかん。

 やっぱり地雷がいたるところにある。

 こういうの。



 多分、四面楚歌って言うんや。
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