ええねん

 ほんなら。



 とオレはティーカップをテーブルに戻す。

 そして。

 もう一歩深いところまで進んでみようと腰を上げる。


「オレにキスされたんも覚えてるやろ?」


 そこでリョウはびくりと身体を揺らす。


「そうやんな。

 あんなに何度もしたんやから、覚えてへんわけないわな。

 そっちはどうやった?

 オレのキス。

 あかんかった?」



 あれ。

 オレドSやな。

 完全に言葉責めやんな。

 これはちょっとあかんムードかも。



「言葉の選択が悪かったな、ごめん」


 オレはため息をつく。


「ただ、イヤやったかどうかを聞きたかっただけやねん。

 オレに抱きしめられんの。

 オレにキスされんの。

 ほんまのところ、どうやねん。

 イヤやったら、イヤでええねんぞ?」


 オレがそうまじめに言うと、リョウはゆっくり視線をオレに向ける。



 久しぶりに視線が重なる。

 リョウは動揺していない様子。

 ただ。



 まだ答えに迷っている感はある。


< 131 / 200 >

この作品をシェア

pagetop