ええねん
せやから想像でけへん。
もしかしたらリョウみたいなやつがクラスにいたかもしれへんけど、少なくとも。
オレは気づかなかった。
自分の生活で精一杯やった。
そういう意味で。
「わたしを外に連れ出すのは唯一、夏くんだけだったの」
出た。
オレは思わず反応する。
ここに出てくるんか、今田夏日。
「部活が休みの日とか、いろいろ連れ出してくれて。
両親はそんな夏くんをすごく信頼していた。
わたしも、いとことして。
自慢だったし、そんな夏くんと一緒にいるのは苦痛じゃなくて普通のことで。
それである冬。
あるお正月。
わたしは連れて行かれたの」
冬。
正月。
あそこやな。
「国立競技場やな」
「そう、満員の国立競技場だった」
「選手権大会の、決勝戦か?」
「うん、決勝だった。
響くんのいたT校と、Y校の決勝戦」
「オレらが中3の年か?」
「そう、わたしは中学3年生だった」