ええねん


 リョウはすっかり魂がぬけたようになってしもた。

 刺激が強すぎたらしい。

 けど。

 オレは本能のおもむくままに生きるタイプの男やから。

 これでもまだ紳士的な方やけどな。



 リョウの髪をなでる。

 部活のときはいつも束ねてる髪。

 まっすぐでさらさらで。

 オレはその髪を何度もすいた。



「オレのことが嫌いやないんやったら、付き合うて」


 しばらくたってからオレはそう言う。

 するとリョウは何度も瞬きをして不思議そうな顔をする。


「嫌いじゃないんだったら?」


「好きて、オレのことを言い切れへんでもええわ。

 今はまだええ。
 
 そのうち昇格するから。

 せやから」


「響くん」


「オレと付き合うてくれるか?」



 リョウのことやから慎重な返事をすると思った。

 そしてその返事が。



「わたしでよかったら」



 どんだけ謙虚やねん。

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