ええねん

「でも」


 と、リョウはトーンを下げた声で言う。


「大事なのは選手名簿に名前を載せることじゃないから」


「それやったら何が大事なん?」


 キっと、リョウの目がオレをにらみあげる。



 二重の目。

 意思を持つと思ったより大きくなった。

 黒い瞳がオレを見上げる。


 
 ひるむっていうか。

 身構える、思わず。



「大事なことなんて何もない」


 意外やった。

 それはまったく意外な言葉。

 もっと意味がある言葉を口にするとばかり思っていた。

 けど、違った。

 何でやろ。

 なんか隠してる気がする。

 根拠はないねんけど。


「ただ、サッカーが好きなだけ」


 そら一番の理由はそれやろけど。

 腑に落ちん。


「みんなのお世話して、時々練習に混ぜてもらって。

 迷惑はかけてないと思う」


「そらそうかもしれへんけど」


「いいんだよ」


 カツリョウが言う。


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