ええねん

 まず視界に飛び込むのはボールをまわされるリョウ。

 やや下がり気味のせいか、ボールがすぐリョウに集まる。


「あれはなんやねん、ゲームメーカーなんか?」


「それもいけるクチ」


「はぁ、女に頼んなや」


「女とか区別すんな」


 けど、事実男と女。

 身体のつくりからして男のほうが強いに決まってる。

 それなのにリョウに頼るやなんて。

 見てて腹立たしいわ。


「おら、ボール動くぞ」


 カツリョウに言われてボールを見る。

 しばらくDFとボールをまわしていたリョウがセンターにいる小柴にあげる。

 と同時に。

 瞬間的にリョウが動く。

 センターサークルを超えてすばやく上がる。

 そして小柴はリョウにボールを出し、胸でワントラップしてきっちり足元にボールを落とす。



 うまい。



 確かにボールの扱いはうまいと思った。

 そのリョウに張り付いたのは左バック。

 そんなことは想定内だったんだろう。

 リョウは身体を左に揺らしたかと思うと、一瞬にして左バックを抜き去る。

 早い。

 その間ボールはもちろん足元に張り付いたままいた。

 
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