ええねん

「オレ、あんたのこと聞いてんで」


 そう言いながらオレは歩き出す。


「え?」


「めっちゃかわいい子がおるって」


「わたし?」


「自分べっぴんさんやんか」


「自分?」


「おまえってこと」


 わかってるくせに。



 ポーズかな。



 オレはそんなことをずるがしこく考える。

 謙虚に見せるのはポーズやな。



 かわいいなんて思ってないですぅ~みたいな。



 そんなわけあるか。

 こんだけ自分を着飾ることができる人間が、自分のよさを知らんわけがない。

 これが天然やったらえらいこっちゃや。


「オレが、かわいい子いないかって聞いたんや」


「かわいい子?

 彼女探してるの?」


「そらそうやろ、オレ別れてきたからフリーやし」


「そういえば誰か言ってた、自己紹介でそんなこと口にしたって」


「大阪と東京はえらい遠いやろ?

 高校生が部活しながら付き合えるわけないやろ?

 泣かれたけどな、こればっかりはしゃあないから」


「切り替えが早いの?」


「効率的やろ?」


 そう言いながら。



 自分もやろ。

 オレは心の中でそうツッコんでいた。

 

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