ええねん

「あいつが副キャプテンなのはようわかる。

 けど、絶対彼女いてないやろ?」


 オレの問いに愛は小首をかしげる。
 
 もちろんかわいく。


「確か、付き合ってる人がいるって話は聞かないけど」


「ほらな、そうやねん。

 ええやつって、ええやつやから、あかんねん」


「響くんは?」


「オレ?」


 突然の愛の問いにオレは立ち止まる。



 そうやな。

 ええやつって、あんま言われたことないかもな。



 結局、そういうことなんかな。


「オレは、あんまり人には優しくないで」


 それも正直に言う。


「自分に甘くて他人に厳しい」


「でも、T校のエースだった」


「あそこは実力主義やから」


「響くんはいい人ではないの?」


「どうやろな。

 でも、あんまりええ人ではないで?

 ちゃらちゃらしとるし。

 彼女はよう泣いてたし。

 オレそんな男やねん」


 愛を見下ろす。

 試すように。

 どう出るか。


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