ええねん


 今田夏日はまっすぐグラウンドに向かってきた。

 そしてわっと部員に囲まれる。


「どうしたんですかキャプテン」


 誰かが聞く。

 すると「オレはキャプテンじゃなくて、ひらだよ」と笑って言う。


「キャプテンは塩入だろう?」


 そう言って今田夏日は塩入を見る。


「昨日試合があって、今日は自主練なんだよ。

 だからせっかくだから顔でも出そうかと思って」



 今田夏日と目が合う。



 今田夏日は冷静に自分の状況を説明しながらオレを見ていた。

 じっと見ている。



 観察?

 威嚇?



 どっちやろ。


「響のことはリョウから聞いてるよ」


 そらそやな。

 オレはそう言って歩み寄ってくる今田夏日に視線を返す。

 なんていうんやろ。



 友好的に、なれへん。



 なんでやろ。

 ポジションも違うのに。

 今田夏日はセンターバックや。

 オレとはまったく違うタイプの選手や。

 それやのに、なんでやろ。



 つくり笑いもでけへん。



 なんて言うたらええか、迷う。

 そう。

 オレは迷ってんねや。

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