あたしの廓-花魁道中-
「そうだねえ…百合。あんたの源氏名は百合やでね、覚えときなさい。本名は明かしたらいかんよ」

喋るだけ喋って、女将は外へでていってしまった。

白を基調にした明るい店の中に残されたあたし。

全く先が思いやられる。

煙草に火をつけて考え事に耽る。

どうせ一日の事だ、すぐ終わる。

適当に交わしておけばいい…まだ何にも知らないあたしはあまりに甘い考えをしていた事に後々気付く。

「あれ?何!?女将、新しい子来てるやない」

その声に驚いて、店の入口に視線を向けた。
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