あたしの廓-花魁道中-
本名なんか聞いてへん…その言葉にわずかながら苛立ちを覚えたのも、事実である。

「勘違いしたらあかん。こんな水商売の世界で、誰かと仲良くしようなんて思いなさんなよ。女の世界は裏切りの塊やからね。百合って言ったね、今のうちから忠告しておくわ。あたしのお客さんに手、出さんでよ?若いからって調子にも乗らないの」

綾子姐さんはそうやってあたしをまくし立てる。

爆発寸前の自分がいた。

一番嫌いなあしらい方をされているのに、何も言い返せない。
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