あたしの廓-花魁道中-
仲良くしようなんて、最初っから思ってもいないし、まず今日一日だけなのに誰の客に手を出すだの無意味な話である。

「分かりました、姐さん」

下手に出て頭を下げる事で、溢れだしそうな怒りを鎮める。

「もう少ししたら、もう一人来るで、ちゃんと挨拶しなよ」

それだけ言うと綾子姐さんは携帯を持って外へでていってしまった。

女将は女将で、どこへ行ったのか帰ってもこない。

「っ…馬鹿にすんなよ…」

あたしの怒りは声にならず、足元にあったビールの箱を思い切り蹴ってみる。
< 40 / 74 >

この作品をシェア

pagetop