青春小説
もし次の雨の日に彼女が来なかったら…
それは僕のせいだ。
もしかしたら僕は、
彼女の居場所をひとつ、
奪ってしまったのかもしれない。
そうでなくても
もう絶対に僕の隣には座ってはくれなくなるだろう。
少し自嘲気味にそんなことを思っていると、
彼女が席を立った。
最初で最後の会話がこんなだなんて…。
「あの…さっきはすいませんでした。
わたし、すぐに緊張しちゃうたちなんです。
でも、話しかけてきてくれて嬉しかった。
ずっと、雨の日にはいつも来てるなと思っていて…」
彼女は真っ赤になって、
小さな声で、気になってたんです、と呟いた。
そして自分はここで毎日バイトをしているから、
よければ雨の日じゃなくても来て下さい、と。
そこまで言うと彼女は走り去ってしまった。
これからは。
もう二度と雨よ降れ、
だなんて祈らない。
晴れの日も、曇りの日も、台風の日でも、
…毎日ここに来るのだから。