恋愛初心者~アイツが好き~
彼に近付けば近付く程、次第に大きくなる真衣の叫び声。
「もう‥せっかくのチャンスだよ?」
「本当に‥無理なんだってば!」
赤面させ、無理だ、無理だ、と叫ぶ彼女。
なのに、よりによって先に逃げ出したのは彼‥大森海斗だった。
あと数メートル‥だったのに。
「もう‥何よ、大森海斗」
まさかとは思うけど‥避けたの?真衣を?
「‥‥ほら、向こう行くよ」
そう言い今度は真衣が私の腕をガッシリと掴んだ。
真衣‥震えてる‥
その腕を通し嫌なほど伝わってくる、彼女の悲しみ。
「真衣、ごめん」
やっぱり‥
悪い事したよね。
まさか大森海斗が、どこか行くなんて思ってなかった。
だって、いつも自分の席にいる。
休憩中は絶対に読書をしてて、動かないはず‥
なのに‥どうして?
「‥‥‥」
もう一度だけ名前を呼んだが、彼女からの返事はなかった。