サンクチュアリ

scene 3

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目的のドーナツを前にため息をひとつ。

ライオンのたてがみみたいなシンプルだけど人気のドーナツと、カスタードクリームがたっぷり入ったふわふわのドーナツ。

美味しそうなのよね、うん。美味しそうなんだけど……。


なぜか同じ席にさっきの妙な大人たちが座ってます。あれ?

あの大騒ぎの後、あたしはそのまま逃げようとしたんだけど、ミナトさんに捕まってこのドーナツ屋に連れ込まれたのよね。


ナニコレ? なんて、本日二度目の疑問。


向かいの席には里村葉。店内の女性陣からちらちら視線を向けられてるのに、素知らぬ顔でコーヒーを飲んでる。


その隣にはミナトさんこと古森湊さん。さっき聞いたところによると里村葉とは幼なじみなんだって。


そしてあたしの隣には古森千夏さんと、その息子の渚くん。この千夏さんも二人とは昔なじみで、里村葉の彼女じゃなく湊さんの奥さんでした。

そりゃ子供の頃からの付き合いなら、腕につかまるくらい普通よね。


……って、いやいや。そんな自己紹介してる場合じゃないんだって。
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