サンクチュアリ
「……、……死神サマぁ」


そう呼びかけた声は完全に泣き声だった。明らかに「じにがみざま」だったもん、今。

仕方ないよね。変てこだけど相変わらずな知り合いの姿に、何だか気が緩んじゃったんだから。


鼻先まで伸ばした長い前髪にダサい黒縁眼鏡っていう、お手本のような根暗スタイル。

しかも体格は鉛筆みたいに細長いし、髪の下から覗く肌は怖いくらい真っ白だし。


だからいかにも精気を吸い取られそうってことで、誰が呼んだか愛称は死神サマ。

もちろんみんな親しみを込めて呼んでる。

普通だったらあまり近づきたくないタイプなのに、この人だけはそばにいると妙に安心するんだ。


だけど死神サマの方はといえば、あたしの顔をじっと見つめて深々とため息をついた。


「あのさ、言いたいことは色々あるんだけど、とりあえずその顔を何とかしたほうがいいよ。パンダになってるから」


……ウォータープルーフなんて嘘つきだ。





+++++
< 22 / 187 >

この作品をシェア

pagetop