サンクチュアリ
…………なに、この美形。


まるで雑誌の中からモデルさんが飛び出してきたみたい。

や、もちろん芸能人みたいなきらびやかさはないんだけど。

真っ黒な髪はセットもしてない無造作ヘアだし、服装もこれといって特徴のないセーターにジーンズだし。

でも。


つやつやゆらゆら、潤んだような黒目がちの瞳。そのインパクト。

鼻筋や口元は涼しげなのに、目元だけが甘くて強い。


きれいすぎて吸い込まれそう。


「あっ、と……君、俺のこと覚えて……ない、かな」


思わずぼーっと見つめていたら、男の人は戸惑ったみたいにそう聞いてきた。

はっと我に返る。え、覚えてないかって言われても、あたしの知り合いにこんな美形はいないはず……。

うん、しばらく記憶を探ってみても思い出せない。大体ここまでのイイ男、一度会ったら忘れられないわよ。

だからあたしははっきりと首を振った。
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