お前、俺の彼女やったっけ? *短編*



俺は考えた。自分の中では奈美は俺の彼女ではなかった。なってくれるんやったら、なってほしいくらいや。
じゃあ何で奈美が俺の彼女?あれ?俺寝てる間に奈美の彼氏になったんか?

うーん…。そんな覚えはない。

いつの間にか病室には、親と姉、それに医者が入って何やら話していた。
『記憶喪失もあるかもしれませんね。 まぁ、あったとしても、一時的なものだと思います。 安心して下さい。』
『純!!』
「ん?」
『私は覚えてんの?』
母さんが心配そうに言った。覚えてる。だって俺、記憶喪失ちゃうもん。


その時に、ちゃんと言えば良かったんや。
「俺は記憶喪失ではない」って。たったその一言やったのに。
でも、その時の俺は事故に合って、寝たきりになって、やっと起きたとこで…。
喉がたまに痛むせいか、その時は言えんかったんや。
ごめん、奈美。心配させて。傷付けて。泣かして…。

いつの間にか、親と医者の間で話が進み、俺は奈美の事だけを忘れてしまった、という事になっていた。

その日から奈美は、毎日病院に来てくれた。
朝、俺が起きれば既に枕元の花瓶の花を変えてくれる。そして毎日俺の傍にいてくれた。
『純ちゃん、ありがとう。 助けてくれて! でも、ごめん。 怖かったやろ? 痛かったやろ?』
そう言いながらも、俺を心配させないために笑ってくれた。

覚えてんのに…今更言えん。今言ったら、奈美怒るやろな。
まぁ、医者も一時的っつってたし、そのうち思い出したフリすればいいかな。



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