もうひとつの七夕物語
牛朗と子供達は、懸命に白い老牛の後を追いかけました。

しかし、白い老牛は牛朗と子供達の目の前で、ためらいもせずに崖に向かって
飛び込んで行ったのです。


牛朗と子供達は、急いで崖の下へおりていきました。

崖の下では、白い老牛の命の灯火は今にも消えそうになっていました。


白い老牛は駆け寄る牛朗に最後の力を振り絞って息も絶え絶えに言いました。

「牛朗よ、私は私の家族を守るために、この命を捧げるのだよ、どうか私のこの思いを無駄にしないでおくれ・・・」

そう言うと、白い老牛は笑顔で静かに息を引き取りました。


牛朗は泣きながら白い老牛の皮を剥ぎ、子供達と共に身にまとい天へと駆け上がって行きました。

白い老牛の皮をまとった牛朗と子供達は、その不思議な力によって瞬く間に
天帝の家来と織女に追いつきました。


ほんの僅かの差で天帝の家来と織女は、天の川を渡りきってしまったのです。

すると天帝は、天の川に架かる橋を壊してしまいました。

橋が無ければ、天の川の向こうへは、白い老牛の皮をまとった
牛朗と子供達でも行くことはできません。



それから、牛朗と子供達は天の川の向こう岸にいる織女を想い毎日毎日泣いて暮らしていました。


織女も同じように天の川の向こう岸で、牛朗と子供達の事を想い毎日毎日泣いて暮らしました。
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