儚い翼
第五章:喜びと哀しみ
晴眼
帰り道。病院から、あたしはゆっくり歩いていた。
涙は既に、消えていた。
あたしより泣いていたのは、東。
別の意味で悔し涙を流していたのは、珠里。
「……ん?」
悲しんでいた最中に、スッとだいぶ遠くで黒い影が映った。
「う…、そ」
あたしはつい、悲しさを消して、嬉しさが明るみに出た。
「聖っ」
聖がいたからだ。
「うーっす。相変らず晴眼だなお前」
「生まれつきだよ。いつ帰ってきたの?」
「今日、一人でな。明日休みだからさ、部活も」
一人なんだ。そっか。
「今日愛心の家に泊まるからなぁ」
「うん。……はぁ?」
「母さん、借金ないから家売ったんだよ。愛心の母さんはいいって事前に言ってたからさ、よろしく」
「はぁ…」
……………。
「うぅ、奏太ぁ。……ありぇ?あれって、愛心?…と、男の子?…しかも笑ってる。奏太が死んだばっかなのに!酷い」
ダダダッ
……………。
クルッ
「どーした?」
「あ、ううん。何でもないよ」
誰かいた気がしたんだけど、気のせいかな。
涙は既に、消えていた。
あたしより泣いていたのは、東。
別の意味で悔し涙を流していたのは、珠里。
「……ん?」
悲しんでいた最中に、スッとだいぶ遠くで黒い影が映った。
「う…、そ」
あたしはつい、悲しさを消して、嬉しさが明るみに出た。
「聖っ」
聖がいたからだ。
「うーっす。相変らず晴眼だなお前」
「生まれつきだよ。いつ帰ってきたの?」
「今日、一人でな。明日休みだからさ、部活も」
一人なんだ。そっか。
「今日愛心の家に泊まるからなぁ」
「うん。……はぁ?」
「母さん、借金ないから家売ったんだよ。愛心の母さんはいいって事前に言ってたからさ、よろしく」
「はぁ…」
……………。
「うぅ、奏太ぁ。……ありぇ?あれって、愛心?…と、男の子?…しかも笑ってる。奏太が死んだばっかなのに!酷い」
ダダダッ
……………。
クルッ
「どーした?」
「あ、ううん。何でもないよ」
誰かいた気がしたんだけど、気のせいかな。